2009年7月23日木曜日

ヨーロッパ日記2009

mita

ついに4度目の欧州ツアー。
今回は和太鼓でコンテンポラリーな活動を続けるレナード衛藤率いる「レナード衛藤BLENDRUMS」。ギターの鬼怒無月、タップのSUJIを従えて、ド イツ、スイス、イタリアで4公演を行う。同行スタッフは舞台監督の斉藤厚(通称パク)と私三田の2名で計5名でのツアーとなった。

6/10(水)

いよいよ出発。
今回は大太鼓を持ち込むことで、運搬に関しての諸問題に頭を痛め、またなかなか日程や旅程が定まらず、準備段階の約半年でクタクタ。やっとという思いである。
レナードは問題の楽器が無事通関出来るように早くもカウンターで必死の手続き。鬼怒は帰国後の手術(現在は完治)を控えて食事制限のため、機内食の綿密な相談。カウンターの担当の女性が思いの他丁寧な対応で、本人も大納得。

同日フランクフルト空港に到着し、たまたま同時刻に空港にいらっしゃったケルン日本文化会館の上田館長自らのお迎えもあり車でケルンまで。
ホテルにはご担当の大西さん山口さんが待ち受けていて下さり、早速文化会館のお招きで食事に。
館長とは3度目、大西さんとは4度目、山口さんは2度目と、僕にとっては懐かしい方々で、一挙に欧州モードに。

6/11(木)

例年と異なり公演の2日前のりで、この日はいきなりOFF。
午前中は当地の太鼓グループによるレナードへのインタビューがあり、午後から観光に。
既に2回ケルン大聖堂に行っている僕は、大聖堂に行くみなと別れ、一人でアーヘンまで。
これが思いの他遠く、やっと着いたら雨。傘も持たず雨の中を歩いたが人通りも少なく特に見るものもなく、直ぐにUターン。

6/12(金)


今日は、ケルン日本文化会館の公演で、本ツアー最初の公演となる。
鬼怒は朝からホテルの中庭でギターの練習に余念がない。
それを聴いていたホテルの受付のおばさまが、中庭へのドアを開けて「こうした方が良く聴こえるわ。」とすっかり聴き惚れた様子。おばさまに本日公演があることを伝えたら、本当に聴きにきて下さった。
今回はノンPAということで、サウンドチェックや照明、リハ全て順調。
開演前にはこれまでにない人だかりで、立ち見を出すもまだ入りきらず、ホール後方のドアを半分開けてロビーまではみ出しながら聴いていただく。それでも入れなかった人が20~30人しぶしぶ帰ったそうだ。欧州での和太鼓人気のことは聞き及んでいたが、これほどとは。
今回のツアーに向けて組んだ3人のバランスも絶妙で素晴らしい内容。当然のことながら全員スタンディング・オベーションで大喝采のうちに公演終了。

終了後いつものように会館で軽い打ち上げ。
テクニカルの上野さん(この方も僕は4度目になります…いつも急なお願いにテキパキと対応してくださいます。感謝。)がご自分のとっておきの蒸留酒を出し てくださり、我々もすっかり良い気分に。打ち上げも程ほどに、これまた例年の事ながら、この日はそのままバスで次なる公演地のデュッセルドルフへ直行。
総領事館の大隈氏、小西嬢の出迎えでホテルに入る。

6/13(土)


欧州でも最大級のお祭りである「日本デー」でのゲスト出演。
例年100万人の人出で、ライン河辺の広場に作られた特設ステージの周りには5000人以上の観客が集まる予定。
しかし懸念していた豚インフルエンザが拡がっていて、前日に日本人学校が閉鎖され、このステージに出演予定だった幾つかのグループがキャンセルになったと聞くが、イベント自体は決行とのこと。

朝のサウンドチェックのため一同バスで会場へ。
既にあちこちで、これも見慣れた日本アニメのコスプレ達の姿が見える。
本ツアーで唯一PAを使用する公演で、レナードがなかなか音色に納得できないが、現地のサウンド・エンジニアは我慢強く我々の話を聞いてくれ、結果オーライ。

昨年は司会を務め今年は我々のアテンドをして頂いているマイト・ピア・智子さんとランチを済ませ、一旦ホテルへ。

18時に再び会場入りし19時半からの出演を待つ。
今年も前日のケルン文化会館の上田館長、大西夫妻が応援に駆けつけてくれている。
そして総領事館の渡辺夫妻も当日ボンでの仕事を終え会場入り。
このツアーの立役者の総領事田中氏は、豚インフルエンザ騒ぎで対応に追われ会場には来れないないとのことだったが、何とか間に合った。田中氏はステージの上手袖で演奏をジーッと聴き入り、涙を流さんばかりに感動されていた。

例年黒山の人だかりであるが、今年はいつも以上で、ヴィデオカメラを持って客側から撮ろうとしてもギッシリで身動きが出来ない。諦めて今年は全てステージ側から撮影することに。
欧州の和太鼓人気と例年以上の快晴が合いまったのか、物凄い熱気のなか演奏が始まる。
今年から設置されたステージ下手の大プロジェクターも大迫力で全てがスケール・アップしている。バンドも好調のまま一気にラストの曲、アンコールと続き、大歓声のなかステージを降りた。

6/14(日)

文化会館の大隈氏と小西嬢の見送りで、デュッセルドルフ空港からいよいよ初のスイスはチューリッヒ空港へ。
日本出発間際までスイスの公演地ツークとのコミュニケーションがうまくいかず、ローカル・エアラインのエア・ベルリンでの大型荷物の運搬、現地の迎え、ホテル、勿論公演に関しても全て不安だらけ。
唯一の頼りは、レナードの古巣「鼓童」の主催者で、今回この状況のなか何かとフォローして下さっているマリア・ゼンダーさんだ。チューリッヒに着きマリアさんが迎えてくれると、一挙に不安が吹き飛ぶ。

マリアさんは自宅に我々を招いてパーティを開催して下さるとのこと。レナードと僕がお供し、パーティ用の買出しに。
マリアさんのご自宅は、アパートを借り切った素敵なお家だ。
住まい、仕事場の他に、畳のある客部屋もあり、またライブも出来るようなスタジオや世界各国の打楽器を集めた倉庫もあり、羨ましい環境だ。
スペイン在住の船乗りのご夫妻も加わり、マリアさんの手料理のイタリア料理とワインで一同すっかり良い気分に。

6/15(月)

完全オフ日で、僕とパクはチューリッヒ湖の遊覧船に乗り込み、湖辺のいかにもスイスらしい家々やアルプスを眺めながらゆったりした時間をすごした。

夜はマリアさんの薦めで、チューリッヒのライブハウスへ。スタッフのローズラさんが同行してくれた。この日のライブは、チューリッヒの有名な地元バンドで超満員。
バンドは50歳を超えるベテランと20代くらいの若手が混合していて、サウンドも旧きロックとオルタナティブ、そしてジャズ的要素も加わった実力もあるなかなか面白いグループだ。

6/16(火)

いよいよ事前に様々な問題があったスイス公演。
チューリッヒから車で2時間程の郊外にあるツークという田舎町にあるチョーラー・ホールが会場だ。会場はなかなか都会的な洒落たホールで、ロビーは広くゆったりと食事も出来るスペースがある。
主催のピーターが出迎えてくれて、にこやかな挨拶。
楽屋もゆっくりと寛げる部屋で、部屋に用意されたケータリングのパンやハム・野菜、飲み物は素晴らしく充実している。なんとワインも飲みきれないくらい用意してある。

到着までその開催が危ぶまれていたのに、どうも肩透かしでとても良い雰囲気。
4公演のうち唯一有料のコンサートでなかなか高い。しかもこんな田舎町。更に事前の問題故にプロモーション時間も充分でなかっただろうということで、お客 さんの入りが心配であったが、しっかり満席にしてくれた。ダメ主催者と思っていたピーターはどうやらなかなかのやり手で、地元の情報誌などにも顔が利くよ うで、大きく取り上げて貰った記事などを見せてくれた。
公演はここでも拍手喝さい。音響の良さもあり、本ツアーで一番の出来となった。

終演後は楽屋で打ち上げがあり、我々全員にスイスの強いリキュールのお土産まで付いた。
以来、我々の間では「素晴らしい主催者」とすっかりと前評判と逆転した。なんとも現金なバンドマン魂である。

6/17(水)


一同チューリッヒ空港からローマはフィウミチーノ空港へ。空港ではローマ日本文化会館の高内嬢のお迎え。
今回はJAL便の都合で4泊となり、予算の関係でアパートを借りたのだが、これが素晴らしく快適。3つのベッドルームを5人で分け合い、他に居間とキッチ ン。コロッセウのすぐ近くでアクセスも良い。シェフ斉藤が連日朝食の準備をしてくれ、食事もなんら問題ない。強いて言えば、鍵が2個しかないのでグループ 行動を取らざるを得ないのが唯一の難点だ。

夜は高内さんと同じく会館の杉本嬢の案内で、イタリアン・レストラン「Da Domenico」へ。昨年のローマでは今一食事に納得していなかったけれど、ここは素晴らしい。流石文化会館の方のお薦めで、店内も程ほどに高級感があ り、値段はリーズナブルで、勿論味は一級。昨年のローマの印象が吹き飛んだ。

6/18(木)

ローマ日本文化会館公演
ここはご担当の高内さんも盛んに気にされていたように、音響的にかなりライブなホールで、案の定太鼓の響きのバランスが難しい。PAも使わないので後は演奏者の力加減次第であるが、リハーサルでの試行錯誤の上なんとか良い感じに。流石全員プロである。

始まるや熱気溢れる観客で、大いに盛り上がる。
タップのSUJIの場面になると、客席の関係で足元が見えにくい後ろのお客さんは、立ち上がって左右の通路に行き熱心に見入っている。
終演後も多くの太鼓ファンがサインを求めて各メンバーに詰めかけなかなか納まらない。
10代と思われる可愛い女の子たちも熱心にサインを求めている。
ドイツやスイスの和太鼓好きは有名だが、イタリアに関してはそういう情報は無かったものの、どうやら自ら太鼓のチームに属している人たちも多かったようだ。
ヨルダンからのお客さんが、来年是非呼びたいと申し出てくれたが、是非実現したいものだ。

夜は、日本文化会館の高田館長夫妻、高内さん、杉本さん、秋山さん、クリスティーナさんと共にイタリアン・レストランへ。ここは特にシーフードがお薦めの様で、シーフード好きの僕には何より嬉しい。
館長夫人も音楽が本当にお好きのようで、本公演のことなど熱心にお話しくださった。

6/19(金)


全公演を終了し、21日の帰国を待っての完全OFF。
昨日僕が突然「ナポリに行ってみたい。」と言いだしたが、文化会館の方たちはあまり薦めてくれない。理由はやはり治安の問題のようである。
一度は怯んだが、男ばかりの4人組(SUJIはこの日はアパートで休養)、なんとかなるだろうと繰り出した。

最近運行するようになったらしい新幹線のような特急で約1時間。
ナポリ駅を出るとやはり怪しい雰囲気で、ちょっと気が引き締まる。
目指すサンタ・ルチア海岸までの行き方が分からず、善良そうな主婦に道を聞くと一緒に路面電車に乗り込んでくれたが、背負っていたリュック・サックを見て、危ないから前に抱えろとの指示。やはり治安は悪いのだなと実感する。

しかし、海辺に着いてみると、なんとも素晴らしい景色。映画などで見るのと同じ、太陽も海も輝いている。何かの映画にあったように、子供たちが次々と海に飛び込んでいる様子が何故か懐かしい。ああ、ここにせめて一週間いたいなあ、と思うがそうはいかない。
海岸の突端にある「卵城」、そしてヴォメロの丘から展望するナポリの町。
突然の思いつきであったが、来て良かった。正に「ナポリを見てから死ね」であった。

6/20(土)

仕事の関係で一足先に帰国する鬼怒を見送り、個々にローマ見物。
昨年バチカン市国でサン・ピエトロ大聖堂に行きながら入れなかったシチリアーノ礼拝堂を目指す。「最後の審判」や天井画を観て、中学生の頃観た映画「華麗なる激情」を思い出し感慨深い。
夜は、ローマ初日と同じレストラン「Da Domenico」で仕上げ。

6/21(日)

長かった欧州ツアーも最後の日がやってきた。
高内さんのお見送りを受け、無事大太鼓の手続きも済み、いよいよ帰国の途へ。

この間多くの人にお世話になり、成果の大きいツアーになりました。
そして何よりも楽しいツアーになったことを、関係の皆様にお礼申し上げます。

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